啓蟄(けいちつ)/こよみと健康その3
2024.03.05 こよみと健康
啓蟄(けいちつ)(2024.3.5~2024.3.19)
啓蟄は「けいちつ」と読みます。「啓」がひらく、「蟄」が冬ごもりしていた虫のことを指し、冬ごもりしていた虫たちが地中から出てきて活動を始める季節です。
【季節の養生】
「春の皿には苦味を盛れ」ということわざはご存じでしょうか。この苦味とはふきのとうや菜の花など春に旬となる野菜や山菜などを指します。薬膳では、苦味は胃腸の働きを良くし、冬の間に体にため込んだものをすっきりと外に出す働きがあるとされています。菜の花やふきのとうなど、春の中でも一時期しか並ぶことのない独特の春の味覚はじつは体にも嬉しい働きをしてくれるようです。
そしてスギ花粉がちょうどピークの季節になりました。3月の中旬までは多く飛ぶ予報となっています。対策としてまず花粉との接触を避けることが大切です。12時前後から夕方までの飛散が多いのでできればその時間の外出を避け、洗濯物を干すのも控えた方が良さそうです。また薬は症状がひどくなる前にしっかり使用した方が効果的なので、この時期は飲み薬も外用薬も定期的な使用をおすすめします。
【ミニ漢方講座その2】
漢方薬には症状だけではなく、その人の体質や季節によっても見極めていく奥の深さがあります。すべての人におすすめとなかなか言えないのですが、代表的な漢方薬を紹介していきます。
葛根湯(かっこんとう)
日本で一番有名な薬かもしれません。落語では葛根湯医者という枕話がありますね。暇つぶしにまではやりすぎですが、風邪のひきはじめや頭痛、肩こりなど症状を見極めれば本当に幅広い使い道があるお薬です。首筋や背中にこわばりがあり、ぞくぞくして汗が出ていないとき、温かい白湯で服用し、温かくして体を休ませるのが基本の使い方で、汗と一緒に風邪を追い払うといったイメージの薬です。
こちらも前回挙げた小青竜湯と同様に麻黄、甘草という人によって少し注意が必要な生薬が含まれています。基本的に医師や薬剤師など専門家に相談して使ってください。
【季節のできごと】
お彼岸(おひがん)
お彼岸は、春分と秋分の前後の3日ずつの計7日間のこと指します。今年の春のお彼岸は3/17の初日が彼岸の入り、3/20の春分が中日(ちゅうにち)、3/23の終日が明けとなります。仏教用語が由来ですが、この時期に祖先に感謝してお墓参りなどするのは日本で発展した文化のようです。
この時期のお供え物として「ぼたもち」は、春のお彼岸では牡丹に由来して「ぼたもち」、秋のお彼岸では萩に由来して「おはぎ」と季節によって呼称が変わります。あんこがこしあんか、粒あんか、米粒がのこっているか、粒状かなど、地域や家庭で違いがあるので、まさに日本人が昔からそれぞれ大切にしてきた習慣だなと感じます。どれがお気に入りか見つけるのも楽しいですね。
(薬剤師・国際中医専門員 飯沼)